近年、生活保護を必要としている人が増加しているにもかかわらず、申請をためらう人も多いという実態があります。
なぜ、生活に困窮しているにも関わらず、多くの人が生活保護の申請をためらうのでしょうか?
本記事では、生活保護申請をためらう人が増加している背景や、申請時に行われる厳しい確認項目、そして実際の申請者の体験について詳しく解説します。
生活保護申請をためらう人が増加している背景

生活保護は、憲法25条に基づく国民の権利です。
しかし、多くの人がこの権利の行使をためらっています。
その背景には、以下のような要因があります。
1. 社会的偏見と恥の意識
日本社会には、生活保護受給者に対する根強い偏見があります。
「怠け者」「税金泥棒」といったレッテルを貼られることを恐れ、申請をためらう人が少なくありません。
この偏見は、メディアによる不正受給の過度な報道も一因となっています。
2. 扶養照会への抵抗感
生活保護の申請をすると、福祉事務所が親族に援助の可否を問い合わせる「扶養照会」が行われます。
これにより、自分の困窮状態が親族に知られることを恐れ、申請をためらう人が多いのです。
支援団体からも、この扶養照会が最大のハードルだと指摘されています。
3. 制度に対する誤解
「スマホやパソコンを持っていたら受給できない」「すぐに働かなければならない」といった誤解も、申請をためらう原因となっています。
実際には、文化的な最低限度の生活を保障する制度であり、これらの誤解は事実と異なります。
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申請時に行われる厳しい確認項目の詳細

生活保護の申請時には、厳格な審査が行われます。
この厳しい確認プロセスも、申請をためらう要因の一つとなっています。
主な確認項目は以下の通りです。
1. 資産調査
申請者は、銀行口座、生命保険、不動産、車両など、すべての資産について詳細な報告を求められます。
福祉事務所は、生活保護法第29条に基づき、銀行や保険会社に直接照会を行うことができます。
このプライバシーの侵害とも取れる調査に抵抗を感じる人も少なくありません。
2. 収入確認
世帯全員の収入について、給与明細や公的給付の受給状況など、詳細な確認が行われます。
隠し収入がある場合、不正受給として厳しい処分の対象となる可能性があります。
3. 就労能力の調査
申請者の健康状態や職歴、資格などを詳しく調べ、就労の可能性を判断します。
働く能力があると判断された場合、就労指導が行われ、正当な理由なく従わないと保護費が減額されることもあります。
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生活保護申請の実態と申請者の体験

実際の生活保護申請プロセスは、多くの申請者にとって厳しい経験となっています。
以下に、申請者の体験や申請の実態をまとめます。
1. 窓口での対応
多くの申請者が、福祉事務所の窓口で冷たい対応を受けたと報告しています。
「まだ働けるでしょう」「他に方法はないのか」といった発言で、申請を思いとどまらせようとする「水際作戦」が行われることもあります。
2021年の統計では、相談に来た人の約31.4%しか正式な申請につながっていないという報告もあります。
2. 厳しい書類審査
申請には多くの書類が必要で、その準備に時間がかかります。
保護申請書、資産報告書、収入報告書、同意書など、詳細な情報を記入する必要があります。
これらの書類作成に困難を感じる人も多く、支援団体のサポートを受ける人も少なくありません。
3. 家庭訪問と生活状況の聞き取り
申請後、ケースワーカーによる家庭訪問が行われ、生活状況の詳細な聞き取りが行われます。
プライバシーに踏み込む質問も多く、精神的な負担を感じる申請者も多いです。
4. 決定までの不安な期間
申請から決定までは通常14日以内(最長で1ヶ月以内)とされていますが、この間の生活に不安を感じる申請者も多くいます。
特に、緊急の場合でも即日での対応が難しいケースもあり、困窮者を追い詰める結果となっています。
三重県鈴鹿市での事例では、財布にある現金を箱に出させ、1円単位で確認するなど行き過ぎた調査も問題になっています。
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まとめ
生活保護は、憲法で保障された国民の権利です。
しかし、社会的偏見や厳しい申請プロセス、制度に対する誤解などにより、多くの人が申請をためらっているのが現状です。
生活保護制度の本来の目的は、困窮した人々を支援し、健康で文化的な最低限度の生活を保障することです。
しかし、現在の申請プロセスや社会の認識は、この目的の達成を難しくしている面があります。
今後は、制度の改善や社会の意識改革が必要不可欠です。
同時に、困窮している人々が躊躇なく支援を求められる環境づくりも重要です。
必要な人が必要な支援を受けられる社会の実現に向けて、私たち一人一人が偏見をなくし、理解を深めていくことが求められています。
それでは、ありがとうございました!
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